理工学部 理工学科 機械知能航空コース
花原和之
システム工学
岩手大学理工学部?花原和之教授らの研究グループは、多くの部品によって構成される機械システムや構造システムの分解順序について研究を行っており、今回、提案していた分解順序推論手法が非常に効率的であることを確認しました。本提案手法は様々な問題に適用可能な極めて一般的な手法であることから、機械や構造物の修理や廃棄といった、分解による部品の取り出しが必要な作業の効率の向上に寄与することが見込まれます。
多数の部品からなる機械や構造物を分解することは、メンテナンスや廃棄の際に必要となる重要なプロセスですが、その分解手順が明確ではない場合も少なくありません。このような場合には、入手可能な情報から分解手順を生成することが必要となります。
このような分解を考える際に必要となる部品相互間の移動の阻害関係を、一般性を持った観点から扱うものとして位置関係マトリクスというのもがあります。花原教授のグループは、これに着目した分解順序推論手法を提案していました。この手法は、非常に多大な計算量が必要となる種類の問題に対して、現実的な時間で実際的な分解順序を与えるものと考えられていましたが、その性能の評価が課題となっていました。今回、乱数を用いて多数の二次元ベンチマーク問題の生成を行うことにより、その性能評価を行いました。
提案手法の記述を整理し、その一般性を明確なものとしました。生成した多数のベンチマーク問題に適用し、小規模な問題については (計算可能であることから) 厳密解と比較することにより、現実的な計算量で実際的な分解順序が生成されることを確認しました。
提案手法により生成された分解順序は比較的実際的なものではありますが、最適性の観点からはやや不十分なものが散見されました。理論的には、本研究で想定している程度の現実的な計算量では、常に最適な分解順序を得ることは不可能です。しかしながら、生成される分解順序の最適性を向上させることは可能であると考えています。また、本研究はまだ理論的な段階にあり、実際の問題への適用についても検討中です。産業界からの依頼に期待しています。
〇題目:Evaluation of Disassembling Process Inference Based on Positional Relations Matrix
〇著者:Kazuyuki Hanahara and Kaori Yamada
〇誌名:Applied Science, Vol.15, No.9
〇公表日:2025年4月
?位置関係マトリクス
機械や構造物を構成する部品相互の移動阻害関係を、マトリクス (行列) の形式にまとめたもの。本研究ではその要素を二進数表記することにより、一般的な問題に適用しやすくしている。
本研究は、以下の研究事業の成果の一部として得られました。
?文部科学省科学研究費補助金?基盤研究(C)「作業者の視点に着目した複雑な機械製品のための分解順序推論」研究代表者: 山田香織